色を理解する
 敢えて言うと、「色というものは存在しない」 らしい。より正確に言えば 「色は、人が見ることよってのみ存在する。
つまり、純粋に人間の生産物なのだ」 。これはミシェル・パストゥローという人の言葉だそうです。

  <厳密には、色彩として認識されるもの> とは何だろう?

それは、人間の目が知覚する波長である。人間の目は、380ナノメートル(1ナノメートルは10億分の1メートル)から
780ナノメートルの範囲にある波長 を感知する。この波長 を科学者は光スペクトル と呼ぶ。分かり易く言うと、
目で見える光 のことだ。

 は、赤外線 マイクロ波 放射線(光よりも波長が長い)、もしくはX 線 UV 紫外線。光よりも波長が短
い )と同じ波動現象 である。ただし、光以外の波長 は我々の目には「見えない」 ことが、根本的に異なっている。

 我々の目に「見える」光源 (太陽や電球やフラット証明や蝋燭など)から発せられたは、物体に当たると、
といって一部だけが通過する。そして、透過 しなかった一部の、時には全部の光が反射 する。この反射した
によって、我々は周囲にあるものを(或いは遠くにある月までも)見ることが出来るのだ。

色の認識

 は三つの要素によって特徴づけられる。その要素とは、色相 明度 (もしくは色価)・ 彩度 である。
 色相 は、特定の波長に反応するスペクトルの色(青・緑・黄・赤・茶など)である。
明度 は、おおまかに言うならば、白の割合 である。例えば、 は薄いピンク から濃いボルドー(茶色味の強い赤)
まで、スカイブルー からマリンブルー(緑色を帯びた濃い青)まで変化する。
そして彩度 は、灰色の割合 に影響される。

 我々が色を認識するのは、人間の目の網膜 に、錐体 と呼ばれる三種類の知覚神経 があり、それぞれがスペ
クト
の中の特定の波長を知覚 するからだ。つまり、錐体( 短波長を知覚する)はを、錐体(中波長を知
覚する)は を、錐体(長波長を知覚する)はを認識する。
 
 現在では、男性の10%と女性の50%に、オレンジ を認識する第四の光受容体 が備わっていると考えられてい
る。これらの人々は、 オレンジ の微妙な色合いを認識する能力に優れているとされ、この色覚  は、「四
色型色覚(テトラクロマット)」 と呼ばれている。

 ところで、もしあなたが女性 で、おさんが方が先天性色覚異常 であったなら、あなたは幸運にもテトラクロマ
ット
である可能性が高いだろう。更に、あなたが茶色 黄色 を好むならば、宝くじ を当てたようなものだ。何故なら、
「緑がかった黄色」 の色合いを識別する能力が、三色型色覚 である一般人の100倍優れているからである。

動植物の色覚
 哺乳類 の90%は色覚 を持たないと思われていたが、現在は、動物はそれぞれ特有のスペクトル を持っている
ことが証明されている。哺乳類の大半は確かに色覚異常 だが、それは彼らの網膜 が二種類の錐体細胞 しか持た
ないことによる(青を中心に感知するS錐体と赤を中心に感知するL錐体のみを保有する)。

 例えば、は青と黄色 以外はうまく識別できない。だから、犬用の食器は青か黄色 を選ぶといい。他の色は全
て、濃淡の差こそあれ灰色 に見えてしまうからだ。 は、青と緑 は感知するが、赤 という色を
知らない。
 は、黄色と緑を正常に識別するが、青と赤を混同する。

 人間よりも遥かに大きなスペクトルを持つ動物も存在する。例えばは、人間と同じスペクトルの色だけではなく、紫外線
領域に含まれる色も識別する。コウモリ は、赤外線 をよく識別する。もしもバットマンに出会ったならば、彼の目には木々の葉
がどんな色に見えているのかを尋ねてみると面白いだろう。というのは、葉の持つ光スペクトル は、大部分がではなく赤外線
に属するからだ。

 同様に、ヘビ が完全な暗闇の中でも獲物を見つけることが出来るのは、唇にある凹み によって、相手が体温とともに放つ
外線 を感知するからである。また、ミツバチ は、紫外線 を非常によく感知する。そこで、多くの花が、賢いことに、人間の目には
見えない色をまとって、ミツバチを引き寄せている。例えば、マーガレット は、我々にはく見えるが、反射する光線の大部分は
紫外線 の領域に含まれる。

 植物 もまた色をよく感知する。より正確に言えば、ある一色、すなわちだけを識別する。これは、植物の持つ光受容器「フィ
トクロム」 が、しか感知しないためである。だから、大半の植物は、赤い光 を当ててやるとすくすく伸びて、お礼に美しい花を
咲かせてくれるのだろう。
                                                                       次回に続く
                                                         
                                                                 ”色の力 より抜粋