”乳酸は疲労の原因ではない”
 乳酸は、体内で糖質を代謝してエネルギー源として利用するときに生じる物質で、長らくこの
乳酸が疲労の原因 だと医学界では言われてきたが、現在の医学では否定 されています。

 
 
乳酸は酸の一種のため、筋肉中で濃度が高くなると筋肉が酸性 に傾き、食事で得た栄養素
をエネルギーに変える酵素 の働きを悪くする。すると筋肉がエネルギー不足 に陥って疲労が
起こり、乳酸がにそれを伝えるシグナル となって疲労感 が自覚される----------。 
これが 乳酸=疲労物質 説に基づく疲労の説明です。
 
 筋肉の2大エネルギー源は糖質 脂質 です。このうち脂質 酸素がない とエネルギーを作り
出せないのに対して、糖質 酸素の有無に関係なく エネルギーになります。
安静時や強度の低い運動時 には、体内に酸素が十分にあることjから、脂質 が生命活動の主な
エネルギー源になっています。

  一方、強度の高い運動 をすると筋肉内の酸素の消費が増えるため、酸素が無くてもエネルギー
になる糖質 が主なエネルギー源となります。 乳酸 は、この酸素の少ない環境下で糖質が代謝
される時に産生され、酸素が供給されだすと筋肉の細胞のエネルギー源として利用 されます。
このように、乳酸 は老廃物などではなく糖質の分解やエネルギーの再利用に働く ということが
判明しています。
 
”疲れの直接の原因となるのは活性酸素”
 乳酸
が疲労をもたらす犯人ではないとしたら、何が疲労の原因となるのでしょうか。
それは脳内で神経細胞を攻撃している「活性酸素」です。

 活性酸素 とは、「呼吸で取り入れた酸素が体内で変化して、他の物質を酸化させる力が強くなった
酸素の総称」 を言い、具体的には
、「スーパーオキシド」「ヒドロキシルラジカル」「過酸化水素」「一重
項酸素」
の4種類があるとされています。


 呼吸をしている限り活性酸素の発生は止められないため、人体には活性酸素の作用を抑え込む安
全装置が備わっています。それが「抗酸化酵素」です。活性酸素による酸化をブロックする働きを持つ
酵素群のことを言い、SOD, カタラーゼ、グルタチオンペルオキシターゼ などがあります。

 活性酸素 は他の物質から電子を一つ奪い、まずは「スーパーオキシド」になります。このスーパーオ
キシドは強い酸化力を持ちますが、抗酸化酵素である SOD によって「過酸化水素」 に分解されます。
そして「過酸化水素」カタラーゼ グルタチオンペルオキシダーゼ といった抗酸化酵素によって
酸素 などに分解され、体内から除去されます。


 このように、発生する活性酸素を抗酸化酵素が100%無力化してくれたら、体には何のダメージも残ら
ないことになります。しかしながら、抗酸化酵素の働きは加齢とともに低下 し、活性酸素に対する防御
力も年々低下
していきます。

 
更に、仕事や運動などの疲れを感じる活動で大量のエネルギーを使うと、酸素の消費量が増えて活性
酸素が大量に発生します。すると、抗酸化酵素の防御力を上回る活性酸素が出現 し、それが細胞
遺伝子 を傷つけてしまうのです。

 細胞で活性酸素の攻撃を最も受けやすいのはミトコンドリア 、「細胞のエネルギー工場」 という異名
を持つ、繭のような形をした細胞小器官 です。ミトコンドリア では、酸素を使って脂質と糖質からエネル
ギーを生み出しています。しかし酸素の消費量が多いので活性酸素が生じやすく、その被害を受けや
すいのです。


 ミトコンドリア が傷つくと「エネルギー工場」としての機能が低下 しますから、細胞はエネルギー不足
に陥って疲れやすくなります。もっとも影響を受けるのは日常生活の活動や運動の主役となる筋肉、そ
して常に休みなく働いている自律神経の細胞 です。

”疲労因子FFと疲労回復因子FR” 
 このように、脳と体で処理しきれない活性酸素が発生することが「疲労」の原因になりますが、活性酸素
が直接的に「疲労感」をもたらすわけではありません。疲労感をもたらすのは、疲労因子の「ファイティー
グ・ファクター(Fatigue Factor)」と呼ばれるタンパク質 の働きによります。以後、「疲労因子FFと呼ぶ
ことにします。

 疲労因子FF とは特定の物質を指すのではなく、機能性を持つタンパク質 の総称です。
脳内の神経細胞などが活性酸素で酸化されると、細胞内から老廃物 の一種が排泄されます。ケガをし
た時に皮膚の傷口から体液が漏れ出るようなイメージです。その老廃物の増加がシグナルとなり、血液
中などに疲労因子FF が増加します。

 そして、「活性酸素が細胞を攻撃して疲労因子FFが増えてきた」 という情報が、前々回で詳述した
大脳の眼窩前頭野 という部位に伝わって疲労感を表出するようになるのです。
 「疲労因子FFが疲労感をもたらしていること」、そして、「疲労とは、疲労因子FFが体内に多く溜まっ
ている状態」
だということが判明したわけです。

 人の体には活性酸素を無力化するために抗酸化酵素 が用意されていると言いましたが、疲労因子
に対しても疲労回復因子 というものが備わっています。
疲労因子FFに対抗するために、疲労の回復を促す物質である疲労回復因子「ファティーグ・リカバー・
ファクター(Fatigue Recover Factor)」というタンパク質 が出現してくるのです。 以後、「疲労回復因子
FRと言いましょう。


 疲労から回復する第一歩は、活性酸素によって酸化されて損傷した細胞を修復することですが、この
役割を担っているのが疲労回復因子FR です。体内で疲労因子FF が発生すると、それに呼応するよう
疲労回復因子FR が活性化します。
疲労回復因子FR は疲労因子FF に対して化学反応 を起こして疲労因子FFの性質を中和し、その力を
抑制しようと働きます。


 体内で疲労回復因子FRによってダメージの回復が進むかどうかは、主に「睡眠」の影響によることがわ
かっています。 睡眠は疲労回復にあたっての大きな要因 になります。

 年齢を重ねるにつれて、疲れが残りやすいと誰しも感じるようになりますが、それは加齢 によって疲労
回復因子FRの反応性が低下するからです。更に加齢 とともに睡眠時間も短くなり、眠りの質も低下
るため、疲労回復因子FR で疲労から回復する余裕がなくなってきます。


 では我々は、この状況にどのように対応すればいいのでしょうか。 それを、次回からみていきましょう。
 
                                              " すべての疲労は脳が原因 ” より抜粋