”睡眠の重要性”
 哺乳類には、ネズミのように夜間に活動して日中に休む種が多いのですが、ヒトは日中に活動して
夜間に休む昼行性動物です。

 前々回詳述したように、日中に仕事や運動をすると大量の活性酸素が発生し、細胞の酸化と損傷
進んで脳疲労が起こります。また、日中に浴びる紫外線も活性酸素の発生を促進します。
 そこで生じるのが、疲労因子FFです。

 すでに触れたように、疲労因子FFが生じると、それに反応して疲労回復因子FRが増えてきて、
化・損傷
された細胞の修復を始めます。ところが疲労が蓄積すると、活性酸素疲労因子FFが出続
けて疲労回復因子FRによるリカバリーが追い付かなくなります。
1日中働き続けて夜になると疲れが溜まったように感じるのは、疲労回復因子FRによる回復が追い
付かないためです。


 一方、眠っている間は大脳自律神経も昼間の重労働からしばし解放されています。活発な活動で
酸素とエネルギーをたくさん使うことがなく、活性酸素の発生とそれによる細胞の酸化と損傷も抑えら
れます。また、夜間は日光が降り注がないので紫外線による酸化もストップします。

 ですから、日中に激しく活動しても良質な睡眠がとれていれば、疲労因子FFによる酸化・損傷を回復
させるに十分な疲労回復因子FRが分泌されるため、脳の疲労は回復します。
逆に睡眠時間を削って働いていると、疲労因子FFによる酸化・損傷を完全にリカバーするだけの
疲労
回復因子FR
が分泌されず、脳疲労が回復しにくくなると言えます。

 を構成する神経細胞の主なエネルギー源は糖質です。神経細胞が糖質をどれくらい取り込んで
いるかは、脳のパフォーマンスバロメーターとなります。


 マウスを使った実験では、丸1日眠らせないでいると、脳で代謝される糖質は約60%まで低下し、
5日間眠らせないでいると約40%にまで低下します。そして5日間眠らせないでおいても、1日の睡
眠で糖代謝のレベルが元通りになることがわかっています。


 健康な状態であれば日頃はあまり意識をすることはありませんが、睡眠は驚くような疲労回復効果、
パフォーマンス向上の力を秘めています。


 避けたいのは、仕事や家事の多忙さなどによる慢性的な睡眠不足です。日中の活動が多忙で緊張
する時間が長いほど自律神経が疲弊し、また活性酸素が多量に出て脳疲労が蓄積します。


 ”疲労回復の決め手は睡眠開始の3時間”
 睡眠と疲労について考える時、「どれくらい眠ったか」という睡眠時間ばかりに気を取られがちですが、
どのくらい深く眠れたか」という眠りの質もまた重要な要素になります。


 眠りにはレム睡眠 ノンレム睡眠 という2つの段階があります。
レム(REM)とは”Rapid Eye Movement"(急速眼球運動)の頭文字を取った呼称で、その名の通り
この段階の間は、閉じた瞼の裏側で眼球がキョロキョロと動いています。
体は休息中なのに脳は覚醒に近い状態の、浅い眠りのことをいいます。


ノンレム睡眠 は「レム睡眠ではない眠り」という意味であり、深さに応じて4つのステージがあります。
このうち脳を休めるのは、主にステージ3と4の深いノンレム睡眠です。ステージ3と4ではデルタ波
いう緩やかな波長の脳波が増えてくるため、「徐波睡眠」(siow-wave sleep)とも呼ばれています。


 眠りは浅いステージ1のノンレム睡眠から始まり、1時間ほどでステージ3と4の深いノンレム睡眠に
至ります。この徐波睡眠のときに脳の疲労回復が進められると同時に、体の器官の新陳代謝 を促す
「成長ホルモン」脳下垂体(内分泌器官)から分泌されます。


 徐波睡眠から次第に眠りが浅くなり、2時間ほどでレム睡眠にスイッチします。レム睡眠では眼球が
キョロキョロ動いていることから分かるように脳は活発に働いており、日中にインプットした記憶を整理
する、学習を強化するなどをしています。


  レム睡眠では、徐波睡眠で分泌された成長ホルモンのサポートで、身体的疲労のメンテナンス
行われています。以後ノンレム睡眠とノム睡眠は交互に現われて、レム睡眠はおよそ90分間の周期
で一晩に4~5回繰り返されます。


 脳の疲労を回復させる徐波睡眠が現われるのは、一晩の眠りの最初の3分の1ほどです。人の体は
睡眠の初期に脳の疲労回復を優先しているのです。それ以降は浅いレム睡眠が増えてきて、目覚め
る準備が整ってきます。


                                            ”すべての疲労は脳が原因” より抜粋