”栄養ドリンクを飲みすぎると疲れはむしろ溜まる”
 まず、ビジネスパーソンが疲労回復を期待して常用することが多いという栄養ドリンクや
エナジードリンクについて考えてみましょう。

 日本で最も売れている栄養ドリンクの一つには、タウリンが多く配合されています。タウリン
胆汁酸の分泌を促すなど、肝臓に働きかける作用が知られていますが、疲労を軽減する
というエビデンスはありません。

 栄養ドリンクの広告ではタウリンの含有量を前面に出してアピールしているため、まるでタウ
リンが多いほど抗疲労の効き目も高そうに聞こえますが、しかし、タウリンは体内で必要量を
合成することが出来る成分であり、より多くタウリンを取ったとしても人の体にプラスに働くこ
とは期待できません。

 加えて栄養ドリンクには、カフェインと微量のアルコールが配合されていることが多いので
すが、カフェインには覚醒作用があり、アルコールには気分を高揚させる働きがあります。こ
うしたカフェインとアルコールの作用により、疲労が軽くなったように感じることがあるでしょう
が、本質的に疲労を回復させるものではありません。

 「疲れた」が口癖になっているビジネスパーソンが日常的に栄養ドリンクやエナジードリンクを
飲み続けることは、疲労回復にとって明らかにマイナスに働きます。
なぜなら、本当は疲れているのに、これらドリンクの覚醒や高揚をもたらす成分が、疲労を隠す
マスキング作用
を発揮するからです。医学的にみた場合、多用すると疲労を見過ごす可能性が
あるため、人の体にとってはむしろ危険だと言えるのです。

 栄養ドリンクやエナジードリンク以外にも、ニンニク料理、ウナギ、焼き肉などの食材が疲れ対
策に効く、特に夏バテ対策に勧められることがありますが、これらも栄養ドリンクなどと同様に、
日本が慢性的な栄養不足で悩んでいた時代に有効であったことです。

 ウナギや焼き肉などは脂肪分が多くてカロリーも高いため、逆に栄養過多になるだけです。更
に、胃もたれや便秘など、消化器官に負担がかかり、それを調整しようと自律神経が過剰に働
いて「疲れ」を呼ぶ可能性のほうが高いのです。
 
 夏バテの真の理由は栄養不足ではなく、高温多湿の環境でホメオスタシスを保つために
律神経が酷使されて「脳疲労」が溜まることにあります。
栄養ドリンクなどに期待するのはやめて、疲労を溜めない働き方、生活を考えるべきです。

”疲労回復成分「イミダペプチド」”
 「抗疲労プロジェクト」では、これまでに医薬界や一般企業、また社会的に疲労回復に効果があ
るとされていた23種類の食品中に含まれる成分(ビタミンC、クエン酸コエンザイムQ10、カルニ
チン、アップルフェノン、カフェインなど)の効果を評価しました。

 この中で、最も効果的だというエビデンスが得られたのは、「イミダゾールジペプチド」(以下、
ミダペプチド)という成分でした。
我々が日常的に食べている食品、「鶏の胸肉」に多く含まれている成分です。

 鶏の胸肉になぜ抗疲労成分が含まれているのかと不思議に思われるかもしれませんが、渡り鳥
の行動を考えると合点がいきます。

 渡り鳥は季節に応じて地上の広い範囲を飛び回っています。渡り鳥たちが、長時間疲れずに羽を
動かして飛び続けることができるのは、羽を動かす筋肉である胸肉抗疲労成分であるイミダペプ
チドが大量に含まれているからです。 家畜化されたはもちろん渡り鳥ではありませんが、野生の
渡り鳥と同じように、胸肉にはイミダペプチドを含んでいます。

 また、渡り鳥と同じ様に海を回遊するマグロカツオなどの大型回遊魚にも含まれています。マグ
ロやカツオは口とエラを通り抜ける海水を介して呼吸をしています。泳ぎを止めると窒息死するため、
寝ている間も尾びれを動かしながら泳いでいます。その尾びれに近い筋肉に、イミダペプチドが豊富
に含まれています。

 前々述したように、疲労を引き起こす原因となるのは、活性酸素による酸化ストレスです。イミダペ
プチドには酸化ストレスを軽減する抗酸化作用があり、そのことが疲労を軽減する効果をもたらすこ
とが明らかになっています。

 「イミダペプチドとは、イミダゾール基を有するアミノ酸結合体の総称」です。

 摂取したイミダペプチドは、消化されて小腸から体内に吸収されますが、血液中や肝臓で「ヒスチ
ジン」と「βーアラニン」という2種類のアミノ酸に分解され、骨格筋や脳の組織に運ばれ、そこで再び
イミダペプチドに合成(再合成)されるという特性があります。

 骨格筋や脳は日頃の活動により活性酸素が発生しやすく疲労しやすい部位ですが、イミダペプ
チド
はその骨格筋や脳で再合成されてその場で抗酸化作用を発揮します。
 
 私たちのには常に全血液の20%程が巡っていますが、大事な脳を守るために脳に血液を送る
途中には危険物をあらかじめ排除する「血液脳関門」という関所があります。
前述のヒスチジンとβーアラニンはともに人体に有益なアミノ酸であり、この「血液脳関門」を通過しま
す。そして脳内にある酵素の働きによって再合成されてイミダペプチドとなるのです。

 しかし、ヒスチジンとβーアラニンはいずれも単独では抗酸化作用がありません。再合成でイミダペ
プチドとなって初めて抗酸化作用を発現する仕組みであるため、脳の疲れにピンポイントで働くと言
えます。
 
 緑黄色野菜や果物などに含まれているビタミンA、C、Eのいわゆる「ビタミンエース」、植物の苦み
などの成分である「ポリフェノール」のように、活性酸素に対抗する抗酸化作用を持つものはイミダペ
プチド以外にもありますが、酸化ストレスに対抗し続ける持続力がかなり違うことがわかっています。

”「クエン酸」にも疲労回復効果”
 クエン酸は、レモンやグレープフルーツなどの柑橘類、梅干し、酢などの「酸っぱさ」を覚える、酸味
を持つ食品に豊富に含まれています。

 クエン酸には、イミダペプチドとは違ったメカニズムが作用します。

 人の体は37兆個と言われる細胞で構成されていますが、細胞にはそれぞれの活動エネルギーを生
み出すための発電所のような極小の器官「ミトコンドリア」が備わっています。

 ミトコンドリアは、酸素を使って主に人が食事で摂取した糖質や脂質といった栄養素を分解し、多量の
エネルギーを効率的に生み出しています。いわば体のエネルギー工場です。このエネルギーこそが多
様な生命活動に利用されます。

 この工場でエネルギーを生む反応にはクエン酸が重要な役割を果たしていることから、ミトコンドリアの
基質の反応部位は「クエン酸回路(TCA回路)」と呼ばれます。
細胞の直接のエネルギー源になっているのはATPという物質です。ATPはADPという物質に変化すると
きに細胞にエネルギーを供給しますが、ATPの貯蔵量には限りがあります。そこでクエン酸回路が働い
て、ADPをATPにリサイクルし続けることで細胞を安定的に動かしています。

 このような生体内でのエネルギーの変換や物質間での移動を、医学的または生物学的には「エネル
ギー
代謝」、あるいは、単に「代謝」と言います。

 細胞が酸化ストレスなどによってエネルギー不足になると、人の脳は疲労感を覚えだし、疲労は蓄積し
ていきます。この時、クエン酸を増やしてクエン酸回路を活性化させると、ミトコンドリアで再びエネルギー
が産出されて疲労は軽減します。

 クエン酸が特に疲労回復効果を発揮するのは、食事などから栄養を十分に摂らずに激しい運動をして
いる時です。このような状況下でクエン酸をとると、短時間でクエン酸回路が活性化します。
 
 ただし、ここで覚えておきたいのは、「クエン酸単独では、疲労の元の活性酸素の攻撃から脳の神経
細胞は守れない」ということです。特に激しい運動や労働をすると、ミトコンドリアにおいてクエン酸回路
でエネルギーを生み出すときに、使った酸素から大量の活性酸素が発生します。
クエン酸でエネルギー代謝は活性化されますが、酸化ストレスは防げないため、活性酸素を放置してお
くと、酸化ストレスによる疲労が蓄積することになります。

 効果的な抗疲労法は、「イミダペプチドとクエン酸を適量、組み合わせて摂取すること」です。なおか
つ、「疲れを感じる前にこれらを日常的に摂取し、予防すること」が、疲労に対抗するために最も効果的
であると判明しています。
                                                                                                                
                                                                          
                                       ”すべての疲労は脳が原因” より抜粋