”身体の基本的なエネルギー源は脂質”
 繰り返し触れているように、身体のエネルギー源になってくれるのは糖質、脂質、タンパク質
の3大栄養素ですが、このうちタンパク質は身体を作る役割 の方が遥かに大切です。
基本的には身体は糖質と脂質を2大栄養素として利用しています。

 このうち安静時には糖質を2割脂質を8割 の割合で使っていると言われています。つまり、
身体の基本エネルギー源は脂質 なのです。

 脂質は体脂肪 として脂肪細胞に貯蔵されています。体脂肪の正体は中性脂肪(トリグリセラ
イド)。3個の脂肪酸 と1個のグリセロール からなる物質です。中性脂肪は常に分解されており、
脂肪酸は細胞のミトコンドリア でエネルギーとなり、グリセロールは肝臓 に運ばれて糖新生
糖質に変化 して利用されます。

 さらに脂質はもう一つ重要なエネルギー源に代謝されます。それがケトン体
ケトン体はケトジェニックダイエット のネーミングの元になっている物質であり、身体にとって極め
て有益な機能を秘めています。

 ケトン体 とは、分解された脂肪酸が肝臓 に入って合成される物質で、アセト酢酸、βーヒドロキシ
酪酸アセトン という3つのタイプがあります。このうちβーヒドロキシ酪酸 は化学構造上はケトン体
ではありませんが、酸化還元反応 アセト酢酸 に転換されるため、ケトン体として扱われます。

  肝臓内で作られたアセト酢酸とβーヒドロキシ酪酸は血液中に分泌されて、アセトンは呼気ととも
に体外へ排出されます。このうち目を向けるべきなのはβーヒドロキシ酪酸 です。

 これまで脳の神経細胞は糖質しか利用できないと言われていましたが、現在ではβーヒドロキシ
が「血液脳関門 」を通過して脳の神経細胞のエネルギー源 になっていることがわかっています。
飢餓に近い栄養環境(厳密には糖質の枯渇)では、脳のエネルギー源の30%以上はβーヒドロキシ
酪酸 によって賄われているのです。

  ケトン体 はエネルギー源になる以外にも人体で有益な働きをしています。寿命を延ばす長寿遺伝
のスイッチを入れたり、抗酸化作用 で慢性疾患を防いだりしているのです。
 
 ケトン体のなかでもβーヒドロキシ酪酸 は、長寿遺伝子の一つであるサート3 との関連が注目され
ています。サート3 はカロリーを制限した飢餓状態で活性化 し、慢性疾患の引き金となる酸化ストレ
を抑制して健康寿命 を延ばすと考えられています。

 マウスの実験では、サート3 が活性化していないとβーヒドロキシ酪酸 が作られないことが明らか
になっています。現時点ではβーヒドロキシ酪酸 そのものが寿命の延長に直に関与しているかどう
かはまだわかっていませんが、少なくとも身体がケトン体 を主たるエネルギー源として利用する「
トジェニック
」な状態になっていればサート3 が活性化しており、長寿遺伝子 のスイッチが入ってい
ると思って間違いないでしょう。

 酸化ストレス は慢性疾患の根本原因の一つですが、βーヒドロキシ酪酸 には酸化を防ぐ抗酸化
作用
があります。これはβーヒドロキシ酪酸 に、体内で酸化を抑える抗酸化酵素 であるSOD
カタラーゼ を賦活する働 きがあるためだと考えられています。
                                                                                                               次回に続く
                                                                                         ”慢性病 を根本から治す"  より抜粋