前回は運動による認知機能改善のメカニズムに関する話題を紹介した。 1 回の運動でも
脳に作用し認知症予防につながる 可能性があるので、運動嫌いや、多忙で定期的な運動
が出来ない人には朗報だ。

 しかし、筋肉での代謝産物が脳に影響 を与えているとすれば、筋力が強い高齢者の方が
改善効果は大きいのだろうか。

 フィンランド・クオピオ運動医学研究所のペンチカイネン博士らの研究チームは、握力 では
なく 上半身や下半身の筋力が高齢者の認知機能と関係 していることを示唆する。

 チームはフィンランド在住の健常高齢者男女338人を対象に 握力、上半身の筋力、下半身
の筋力と認知機能との関連性 を検討した。 上半身 の筋力は チェストプレス ( 両腕でバーを
胸の前に押す筋力 )と シーテッドロー ( 座位でチューブを引き寄せる筋力 )、下半身 の筋力
膝の伸展力、屈曲力 レッグプレス ( 膝を伸ばすときに両足でプレートを押す筋力 )で
評価した。

 その結果、握力と認知機能の関連性 は見いだせなかったが、上半身と下半身の筋力が強
い 高齢者ほど認知機能が保たれている 傾向が浮かび上がった。 握力測定 は簡単に実施
できるので 筋力を測定するのに最も簡便 な方法だが、認知機能 との関係において、上半身
下半身の筋力 を更に詳しく評価することの重要性を研究チームは強調する。

 確かに 高齢期の認知機能 は、歩行や階段の上り下り といった 運動器の機能 に密接に
関係しているので、下半身 の機能や 姿勢を維持 するための 躯幹筋 ( いわゆる インナー
マッスル
)の筋力や 上半身 の筋力が大きな影響を与えているだろう。

 高齢期の生活の質 を維持するには 認知機能と運動機能を維持 する必要があるが、この
二つは密接に関連しているようだ。

                           新聞記事 Dr.白澤 ”100への道” より 転載