在宅療養支援診療所「たかせクリニック」(東京都大田区)理事長で医師の高瀬義昌さんが訪
問診療に出向くと、80代の女性に異変が起きていた。 日頃の 活気 食欲 がない。エアコン
はついており、ベッドの近くにはおのペットボトルも置かれていた。

 一見すると 暑さや水分対策 に気を配っているようだが、女性はカーテン越しに が伝わる
窓際のベッド に横たわっていた。高瀬さんは、夏になるとこのような 脱水症状 の患者を多く目
の当たりにする。

 熱中症 は、高温多湿 の環境で 体内の水分と塩分のバランス が崩れ、体温の調節機能
働かなくなることで生じる。その引き金となるのが 脱水 で、体内の 水分量 が少ない 高齢者
特別な注意が必要だ。

 新生児 水分量 70~80%成人 が約 60% あるのに対し、高齢者 は約 50%。加齢
によって 水分や塩分 が蓄えられる 筋肉の量が低下 するのが原因だ。高瀬さんは 「筋力維持
の運
動やリハビリ 転倒や骨折防止 のためだけでなく、脱水予防 の観点からも重要です」 と
話す。

 また、高齢者は 喉の渇き を感じにくくなるため、水分不足 に気付きづらい。更に、寝ている間、
トイレ に行かずに済むよう、水分 を摂るのを控えている人もいる。 高瀬さんは、「普段から水や
お茶を飲んでいるから大丈夫」 という 高齢者の声 をよく耳にするが、安易に考えてはいけない
と忠告する。

 脱水 になると、水分 と同時に 塩分電解質)も失われる。水やお茶 を飲むだけでは 塩分濃度
更に低下 し、症状が悪化 するという悪循環に陥る。初期の脱水状態 に有効なのは「飲む点
」 と言われる 経口補水液。 「適度な 糖分ブドウ糖) が含まれているため、水分と塩分が腸か
らスムーズに吸収 されます。一方、スポーツドリンク 糖分 が多すぎるため、経口補水液 に比
吸収率が低く、症状の改善には適しません」 と高瀬さん。

 更に、「認知症患者は脱水症状を起こし易い」 と指摘する。脳の働きが低下 して 体温調節
機能も衰えているためで、脱水が進行 すると せん妄 が起こり易くなり、突然 動き回ったり 叫ん
だり することもあるという。

 脱水症状 を起こしているかチェックする方法の一つとして、脇を触り 乾いていれば注意 する。
高瀬さんは「高齢者の熱中症 は周囲も見落としがち。気付いた時には 意識レベルが低下 した
り、体調が急変 したりして 命の危険 を招きかねない」 と警鐘を鳴らす。

 夜は寝苦しいが、就寝中に 汗を大量にかく のを避けることも重要だ。この 寝汗 は体から 水分
を逃がすだけではなく、自律神経を疲弊 させてしまうからだ。

 東京疲労・睡眠クリニック(港区)の院長、梶本修身さんは、「高齢者には 熱中症 になる悪条件が
そろっています。体の水分が減り、渇きを感じるセンサーが鈍る だけでなく、自律神経の機能 も落
ちるのです」 と指摘する。
 
 加齢による 筋力低下 は実感しやすいが、自律神経の衰え は自覚しにくい。 睡眠 の専門クリ
ニックでは、自律神経の機能 を数値化した 「パワー値」 を測定できる。この値は 20代 から下が
り始め、40代 でほぼ 半減60代 では 約4分の1 に減るという。

 自律神経は体温も調節 する。梶本さんは「 高齢者 では 自律神経機能が減退 しているため、
汗をかいて体温を下げる機能 が低下する。 睡眠中 体温が高い ままでは質の良い睡眠を得
られない。 その結果、自律神経の疲労 が蓄積し、機能が 更に悪化 する。これが高齢者におい
熱中症 が起こり易い理由の一つです。

 そのため、熱中症予防 には快適な 睡眠環境 を確保することが必要で、エアコン は欠かせない。
梶本さんは 「寝る前に タイマー をかける人がいますが、スイッチが切れると 温度 が急激に上がり、
熱中症になる危険性 が高い」 と強調する。

 エアコンを朝までつけていると 「喉が痛い」 という人もいるが、乾燥が原因。 寝る30分ほど前に
コップ半分(約100cc)の を飲んでおくとよい。 「朝起きるとだるい」 という人は、冷風 が直接当
たったり、体が冷え過ぎ たりしている可能性がある。

 寝る前は 室内の温度 を涼しいと感じるまで下げておくと寝付きがよくなる。 冷え過ぎ を防ぐため、
タオルケットではなく 掛け布団 をかけ、熱を放出する手のひら は布団から出しておく。 眠る直前
に設定温度を2度ほど上げて、朝方に快適だと感じる温度 に合わせておこう。 但し、熱中症の危
が高まる28度を超えないようにセットする。

 また、高齢者は をかく人が多い。これは要注意のサインだ。梶本さんは 「をかく人の割合は
年齢パーセント>と言われ、60代なら60%、70代なら70%と年を追うごとに上がる。 をか
いている時は 酸素不足 に陥り、それを補うために 自律神経 血圧や脈拍 を上げようと働く。 鼾
寝汗 と同じく睡眠中にもかかわらず 自律神経を疲弊 させ、体温調節の機能 に悪影響を与え
る」 と話す。  

  梶本さんは 鼾を止める簡単な方法 として、体を横向き にして寝ることを勧める。 上向きより 気道
が広がるためで、姿勢を変える だけで約8割の人に改善が見られるという。

 快適な環境 を整えるだけでなく、加齢による体の変化 を自覚することも、熱中症対策につながる。

                                                   新聞記事より 転載