目を閉じて深く静かに思いを巡らす「瞑想」 には、様々な 健康効果 が報告されている。 注意力
集中力 などの 認知機能 の向上は、その一つだ。 高齢期 になると 注意力や集中力が低下 する
ことが知られ、注意力の低下は脳の 前頭葉の萎縮 との関連性が指摘されている。 一方、ヨガ
瞑想と呼吸法とストレッチ を組み合わせて一体化した運動プログラムとして普及している。
 
 それでは、加齢に伴う注意力の低下 を防ぐ有効な手段はないのだろうか。

 ブラジル・サンパウロのアルバート・アインシュタイン病院のエリーザ・コザサ博士らの研究チー
ムは、高齢の女性ヨガ実践者 の脳を調べ、左脳の前頭前野の容積 が対照群に比べ大きいこと
を明らかにして、話題を呼んでいる。

 チームは高齢期の女性ヨガ実践者21人を対象に、脳の磁気共鳴画像化装置(MRI)検査 をし、
身体的な活動量は同等ながらヨガや瞑想をしない高齢期女性21人の脳の各部位の容積と比較、
検討した。 ヨガの実践者は週2回のヨガを少なくとも8年間継続している。

 その結果、ヨガ実践者は対照群よりも、左脳前頭前野の大脳皮質の容積が有意に大きい こと
が分かった。 これまでの研究で 左脳の前頭前野 認知機能 の中でも 注意力や集中力 に関
連していると報告されていることから、コザサ博士は、ヨガでの瞑想 の実践により 左脳前頭前野
萎縮が予防 された可能性を示唆する。

 認知症の予防目的で左前頭前野に 磁気刺激治療 を施すと、集中力がアップ して 自律神経バ
ランスが改善
する効果が認められるが、ヨガの瞑想 でも同様の効果が期待できるようだ。高齢期
注意力、集中力の低下予防 のためにも 瞑想やヨガを実践 したい。
                             (白澤卓二・お茶の水健康長寿クリニック院長)
                        新聞記事 Dr.白澤 ”100歳への道” より 転載