アルツハイマー病 は、認知症の原因疾患 で最大の割合を占める。未だに 原因不明難治性
神経変性疾患 で、記憶や学習 などの 認知機能 が徐々に低下していく。 現在、4種類の治療薬
が認可されているが、いずれも病気の進行を止める薬ではない。

 仮に早期に診断され、薬の治療を開始しても、最終的には 介護生活や寝たきり状態 を回避で
きないのが現状である。

 そんな中、米国のフロリダ・アトランティック大のジェームズ・カルビン教授は、アルツハイマー
病の予防戦略 に注目。 予防効果 に関する科学的証拠が記載された既存の論文を包括的に調
べ、アルツハイマー病のリスク因子 を減らすことによって 約30%の発症を予防 できるだろうと
結論して話題を呼んでいる。

 カルビン教授が着目した発症リスクとは *糖尿病 肥満 高血圧 睡眠時呼吸障害
と喫煙 高コレステロール血症 虚血性心疾患 うつ病 ストレス 外傷性脳障害
体活
動の少ない生活スタイル 脳への刺激の少ない生活や不健康な食生活 ーーー である。

 各個人によってそれぞれの 発症リスクの寄与率 が異なることから、予防戦略 が一人ひとり
別化 されることの重要性をカルビン教授は指摘している。

 つまり、運動 しない人に対しては 日常生活の活動性 を上げるように、タバコ を吸う人には
を、不健康な食生活 の人に対しては ファストフードや加工食品 を減らすように指導する。

 あるいは、脳への刺激 の少ない人に対しては生活の中で コンピューター を使ったり、芸術品や
工芸品 を作製したり、グループ討論 に参加したり、音楽鑑賞 などの趣味を持ったりするように指
導する。  そういった 個別化された予防戦略 が有効だろう。
                                                                     
                                                                      <白澤卓二・お茶の水健康長寿クリニック院長> 
                      新聞記事 Dr.白澤 100歳への道   より転載