ヒトのゲノム(全遺伝情報)は、約31億の 塩基配列 から構成され、その上に約2万2300個の
遺伝子 が存在すると推定されている。 肥満 については 家族歴 や  遺伝的素因が認められ、
満症の発症に関わる遺伝子 の研究も進んでいる。


 これまでの研究から、少なくとも 97の遺伝子座(遺伝子の場所)が 肥満 に関連すると報告さ
れている。 スウェーデンのウプサラ大のマティアス・ラスク・アンデルセン博士らの研究チーム
は、これらの 肥満関連遺伝子 環境要因 に影響を受ける点に注目。
 
 
 英国在住の 中年男女36万人 の調査データを対象に 食事、喫煙、飲酒、社会経済状況(収
入や社会的地位など)、身体活動、精神的ストレス、睡眠など131項目 肥満関連遺伝子
の関連性を解析した。


 その結果、身体活動量 の多い人や 社会経済レベル の高い人の 肥満の遺伝的リスク は、そ
うでない人に比べ、有意に低い ことを見い出したのである。
 また、アルコールの摂取頻度 が高い人ほど、FTO と呼ばれる 肥満遺伝子のリスク が下がっ
ていることも発見した。

 研究チームの推定によると、毎日アルコールを摂取する人 は全く摂取しない人に比べ、FT
遺伝子
肥満リスク が約半分に減っているという。 この FTO遺伝子変異 は、脂肪細胞の糖
質代謝 熱産生 に関連していることから、アルコール 肥満遺伝子 何らかのメカニズム
で抑制することにより、脂肪細胞の代謝 が変わり、太りにくくなる可能性 を指摘する。


 アルコール摂取頻度 肥満遺伝子 の関連性を正確に理解するには更なる研究が必要だ。
それは別として、どんなに 肥満の家族歴 があっても、身体活動量を高めて社会経済レベルを
上げる ことにより、親から引き継いだ肥満リスクを減らす ことが出来るようだ。

    
                                                                           (白澤卓二・お茶の水健康長寿クリニック院長)
                     新聞記事 Dr.白澤 100 歳への道  より転載