最大の発症リスクか
 お認知症については、赤ワインを飲む人は発症リスクが下がるとの報告が複数あり、こ
のコラムでも赤ワインを推奨してきた。 一方、アルコール摂取と認知機能低下に関連性があ
るとの報告は多数あるが、重度飲酒認知症発症リスクに関する大規模な疫学調査はなか
った。

 世界保健機関(WHO)は重度飲酒を、男性で1日平均60g以上、女性で40g以上の慢性的
アルコール摂取と定義している。 アルコール60gワイン500m日本酒約2合強に相
当する。

 そんな中、フランスのトランスレーショナル医療経済ネットワーク研究グループのシュワジンガ
ー博士らは、重度飲酒アルツハイマー病を含めた全認知症の最も有力な発症要因になるこ
と、特に早期発症認知症では最大の発症要因になっていることを報告した。

 チームは2008~13年にフランスの主な病院に入院した患者3162万人を対象に、重度飲酒
認知症の関連性を調べた。 調査期間中に約111万人認知症と診断され、驚くべきことに、
早期認知症と診断された5万7353人(認知症患者の5.2%)の56.6%に相当する患者に
度飲酒歴を認めた。

 また、重度飲酒の人はアルコールを摂取しない人に比べて、男性で3.36倍、女性で3.34倍
認知症発症リスクが高いことが分かった。

 今回の調査で、タバコ、肥満、高血圧、糖尿病、うつ病、低教育歴、難聴など他の認知症リスク
と比べても、重度飲酒が男女ともに最も重要な発症要因である点をシュワジンガー博士は強調
する。

 これまでも赤ワインでグラス3杯を限度にアルコール摂取を推奨してきたが、過ぎたるは及ば
ざるがごとしの故事通り、飲み過認知症予防大敵だ。

                             (白澤卓二・お茶の水健康長寿クリニック院長)

                     新聞記事 Dr. 白澤 ” 100歳 への道 ” より 転載