アルツハイマー病 の発症に関わる リスク遺伝子 は150以上報告されているが、最も重大な
のが アポE4遺伝子 だ。 アポE遺伝子 には 2型、3型、4型 があり、日本人 での頻度はそれぞ
4.8%、85.1%、10.1% と報告されている。

 アルツハイマー病 を発症した 日本人 の51%が アポE4遺伝子 を持つとの報告もあり、発症
リスク、発症年齢の若齢化、認知機能の低下速度の加速化 など多面的に関与している。 一
方で アポE3 を持つ人は正常型、アポE2 を持つ人は アルツハイマー病 のリスクは低いものの
高脂血症 のリスクが高まると報告されている。

 「 アルツハイマー病 真実と終焉 」 の著者デール・ブレデセン博士は元来、人が持っていた
遺伝子タイプは E4型 だが進化の過程で E3型 が22万年前、E2型 は8万年前に出現したこと
に着目する。 人が 農耕 を始める前は 狩猟、採集、漁労 を中心とした 肉食生活 で攻撃性や瞬
発力、強靱な免疫力が求められた。

 アポE4遺伝子 脂質 脳や筋肉 などに速やかに運ぶ機能を持つ一方、炎症 を起こし易い
遺伝子でもある。 病原菌 の多い生肉を食べ、傷も絶えない 狩猟生活 では強い 炎症反応 を仕
掛けることで 生命 を脅かす 感染 から身を守る必要があった。

 つまりチンパンジーと二足歩行の人類を分けた 「 神の遺伝子 」 が アポE4 だとブレデセン博士
は考察する。

 しかし、アポE3型、アポE2型 の出現で日本人の90%は攻撃性が少なく強い炎症を起こさな
いタイプに置き換わった。 結果的に元来の人類に比べ、アルツハイマー病 の発症リスクは劇
的に低下した。

 自分が アポE4遺伝子 を持っているかは 遺伝子検査 で調べられる。 もし持っていたら40歳
から アルツハイマー病 の予防が必要だろう。
                              (白澤卓二・お茶の水健康長寿クリニック院長)     
  
                     新聞記事 Dr. 白澤 ” 100歳 への道 ” より 転載