高血圧 は大きく分けて、「 本態性高血圧 」 と 「 二次性高血圧 」 に分けられます。

 本態性 とはいかにも専門用語という感じですが、平たくいえば、「 原因がはっきりしない 」 と
いうことです。

 二次性高血圧 とは、他の病気があって、そのために 高血圧 になるもので、例えば 血圧 を上
げる  ホルモン が多く分泌される 「 内分泌性高血圧 」 とか、腎臓 に問題がある 「 腎性高血圧
などが代表的なものです。

 二次性高血圧 はいわば原因の分かっているものですが、これは 10% ほどで、高血圧患者
90 % が 本態性高血圧 に分類されます。

 血圧 を下げる薬 (「 降圧剤 」) には様々な種類があります。

 しかし、高血圧 の 90 % は原因が分からないのですから、言い方は悪いけれど、薬は当てずっ
ぽうで使うことになります。 どれか使ってみて、血圧 が下がらなければ別の薬に替える。 血圧
が下がっても、副作用 が出るとまた替えます。 患者さんには内緒ですが、の選択には 医師
製薬会社 売り込 みなど、非医学的要素 が多く含まれます。

 家で 血圧 を測ると正常なのに、診察室で医師が測定すると高くなるのを、「 白衣性高血圧 」 と
呼びますが、これは緊張による 血圧上昇 ですから、生理反応 です。

血圧が高いと何故わるいのか
 
高血圧 が何故悪いかと言えば、直接的には弱った 血管 の破裂や出血を引き起こすからであり、
間接的には 動脈硬化 を招くからです。

 動脈 は、「 内膜 」 「 中膜 」 「 外膜 」 の三層構造になっています。 血圧 が高いと、内膜
が傷つきます。 それを修復するために、血小板 が集まり、それが固まって 血栓 となります。 
脂血症 の場合は、血栓 コレステロール がこびりつきます。 それが アテローム粥状 )性
の隆起( プラーク ) になり、動脈 の壁が 肥厚 して硬くなるのです。 これを 「 アテローム性動脈
硬化症
」 といいます。

 医学生の頃、病理 の実習で、動脈硬化 を起こした 大動脈 の展開標本 ( 縦に裂いて開きにした
もの ) を触りましが、本来ならつるんとした 血管 に、溶けた プラスティック  のような プラーク がこ
びりつき、曲げるとジャリジャリと ガラス質 の感触があったのを覚えています。 自分の 血管 がこ
うなったらおしまいだと思うと、自ずと 食生活 には注意するようになります。

 国民の 健康増進 を図るなら、メタボ健診 のような迂遠なことをするより、動脈硬化 標本 を見
せる方が、はるかに効果的で安上がりだと思います。

                                                                                     久坂部 羊 著 ” カラダはすごい !” より