病院の医師や看護師は、診察では 白衣 を着ていますが、手術の時には 青い手術着 を着て
います。 何故 ものを着用しているのでしょう。

 実は、科学的根拠 に基づいた理由があるのです。

 それは 「 残像 を防止するため 」 です。 一つの色をずっと見ていた後、視線を他に移すと、
見ていた色が目に残ることがありますね。 これが 残像 です。

 手術中は、長時間にわたって 赤い血液 臓器 を見ているため、視線を上げた後も 赤色
残像が残り、目の 補色作用 によって 白色 青緑色 に見えてしまうのです。

 これは、ずっと を見ていたことで 網膜 に対する感度が低下して、補色にあたる  青
を感知する 網膜上 感度 が高くなるからです。 私たちの 視覚 は、一つの色を見つめる
ことで、その 反作用 補色 が生成されます。 これが 補色作用 です。

 手術中に 残像 がチラチラ見えると、が疲れて 手術 に集中できなくなり、ミス を誘発する
原因にもなります。 つまり、手術ミス を防止するために、の補色である 青い 手術着が使
われるようになったのです。 これを 「 陰性残像 」 といいます。

 「 陰性残像 」 を発見したのは、「 もっと光を 」 で有名なドイツの文学者 ゲーテ だと言われてい
ます。 ゲーテ は、パーティーで 赤い ドレスを着た女性に目を奪われて、その女性をずっと眺
めている時に 「 残像現象 」 に気づいたそうです。 文学者 らしいエピソードですね。

 皆さんも、試しに 赤い紙 をじっと見た後で、白い紙 に視線を移して下さい。 青緑色 残像
がボンヤリと浮かんできませんか?

                         坂井建雄 著 ” 面白くて眠れなくなる人体 ” より 転載