今でこそ外国語に堪能な人が増えたことで、翻訳の間違いはチェックできますが、ひと昔前
は間違いに気づく人が少なかったために、翻訳ミス が罷り通ってしまうこともありました。
 その代表的な例が、自然分娩 ではなくお腹を切開して赤ちゃんを取り出す 「 帝王切開 」 と
いう言葉です。

 帝王切開 はラテン語で 「 sectio caesarea開腹分娩 )」 といいます。 「 caesarea 」 は
切る 」 という意味ですが、これが 「 Caesar ( カエサル・帝王) 」 と間違えて翻訳されてしま
いました。 それが現在に至るまで修正されることなく、正式名称 として使用されているのです。

 カエサル(ラテン語でシーザー) と言えば、古代ローマの軍人かつ政治家です。 帝王切開 
という名前は、シーザー 開腹分娩 で生まれたからと説明されていたり、帝王切開 という出
生にちなんで シーザー の名ができたと説明されている事例もあります。 しかし、どちらも誤り
です。

 ドイツ語 では 開腹分娩 を 「 kaiserschnitt 」 といいますが、これは 「 皇帝の切開 」 という意
味です。 どうやら ラテン語 から ドイツ語 に訳される時に誤解が生じてしまったようです。 以
上のことから、帝王切開 シーザー とは全く関係がありません。

                              坂井建雄 著 ” 面白くて眠れなくなる人体 ”  より