ハート 心臓 を意味しています。

 しかし、本当の 心臓 はどこから見ても ハート形 とは言えません。

 何故、心臓 ハート形 というイメージなのでしょうか。

 心臓 には 心室 心房 がありますが、ハート形 が作られた頃には 心室 だけを 心臓 だと
考えていました。 心室 だけを取り出してみると、確かに ハート形 に似ています。

 実際に、十五世紀に描かれたヨーロッパの医学書では、心臓 を単純な ハート形 で表して
います。 その頃には、心房 静脈 の一部だと考えられていたのです。

 古代ローマにおいて 「 医師の君主 」 と呼ばれた ガレノス は、静脈血 は栄養素を全身に
伝える 液体 だと考えていました。 で吸収された栄養素は、肝臓 に運ばれて 静脈血
なり全身に運ばれるため、静脈系 の中心は 心臓 ではなく 肝臓 だという訳です。

 また、右心房 心臓 の一部ではなく、静脈系 の一部とみなし、心室 だけが 心臓 である
と主張していたのです。 この説は、現在のような正確な 血液循環 を、イギリスの解剖学者
ウイリアム・ハーヴィー( 1578~1657 )が発見するまで支持されていました。

 レオナルド・ダ・ビンチ 心臓 の解剖図にも、心室 だけが描かれています。 ダ・ビンチが
描いた全身の 血管系 の図も、肝臓 を中心としたガレノス説の 静脈系 でした。 判断の基準
が変わると、物事の見え方 が百八十度変わるということです。

                            坂井建雄 著 ” 面白くて眠れなくなる人体 ” より