神経幹細胞 は、胎児期 や 成長期 の 脳 の 発育過程 で 分裂 を 繰り返
し、必要な 神経細胞 を新生している。 1990 年代になり 染色 する 技
術が 開発 されて以降は、神経幹細胞 が 成人 や 高齢者 の 脳 にも 存在
することが 報告 されてきた。
 
 もし 高齢期 の 脳 に十分な 神経幹細胞 が存在するなら、アルツハイ
マー病 や 脳卒中 の リハビリ期 に 神経 の 新生 を 誘導 し、認知機能 や
神経機能 の 回復 が期待できる。

 米シカゴ にある イリノイ大 の マシュー・トビン博士 らの 研究チーム
は、アルツハイマー病 の 脳 にも 神経幹細胞 が存在し、細胞分裂 を続け
ていることを明らかにして 話題 を呼んでいる。

 アルツハイマー病、軽度認知障害( MCI )を含む 18 症例( 平均年齢
90.6 歳 )の 高齢者 の 解剖 した 脳 を 対象 に、神経幹細胞 を 染色 し、
海馬 における 神経幹細胞数 を 測定 。 アルツハイマー病群、MCI 群、
健常高齢者群 で 比較検討 した。

 その結果、海馬 の 顆粒細胞層下部 で 1 立方ミリメートル 当たり 平均 419.
9 個 の 神経幹細胞 が 観察 され、そのうち 平均 11.2 個が 細胞分裂 して
いると考えられた。

 群間 で比べると、アルツハイマー病群 や MCI 群 の 海馬 では 神経幹
細胞 が 減少していた。 更に 解析 したところ、細胞分裂 している 神経
幹細胞 の 数 と 認知機能 の 間 に、有意 な 相関性 が 認められた。

 私たちの お茶の水健康長寿クリニック では アルツハイマー病 を 対象
神経再生治療 を 試みており、多数 の 症例 で、神経再生 が 脳波 によ
り確認されている( 拙著「解毒・神経再生治療でアルツハイマー病は予
防・治療できる!」<すばる舎>で紹介)。

 今回の イリノイ大 の研究で 高齢期 や アルツハイマー病 でも 神経再生
が持続していることが確認された。 今後、神経再生治療 が アルツハイ
マー病治療 の 有力 な 選択肢 になることを期待している。 

                                             (白澤卓二・お茶の水健康長寿クリニック院長)
                  
           新聞コラム Dr. 白澤 ” 100 歳への道より