肥満、2 型糖尿病、高血圧 といった 生活習慣病 が、認知症 の リスク
になることは知られている。 ただ、どのような メカニズム で関与して
いるかについては、必ずしも正確には理解されていない。

 そんな中、米マイアミ大公衆衛生学の ミシェル・カウンカ博士 らの研
究チームが、60 代の人々の 肥満度ウエストサイズ大脳皮質
に影響することを明らかにして話題を呼んでいる。


 研究チームは ノーザン・マンハッタン・スタディー という 大規模調査
の中で、磁気共鳴画像化装置( MRI )検査を受けた 1289 人の 高齢期
男女( 平均年齢 64 歳 )について 肥満度( BM )、ウエストサイズ
血中の アディポネクチン( 脂肪細胞から分泌される 善玉 のタンパク
質 )と、大脳の容積、大脳皮質の厚さ、大脳白質の変性病変、小さな梗
塞像
ラクナ梗塞 )との関連性を検討した。

 その結果、BMI ウエストサイズ が大きい 60 代の高齢者は、小さ
い高齢者に比べ、大脳皮質 厚さ が 薄いことが分かった。 しかも、
これらの関連性は 65 歳以下でより顕著に認められた。

 一方、これまで 動脈硬化 などの 血管病変 と関連すると考えられてきた
白質病変小さな梗塞像アディポネクチン と 肥満度 や ウエストサイ
ズ の間には関連性を見いだせなかった。 大脳皮質 には 神経細胞 が 局
在 していて、加齢 認知症 ではその数が減少して 認知機能 が低下する
ことが知られている。

 カウンカ博士は、肥満 を発症すると 血管障害 でなく 神経細胞炎症
を引き起こし、大脳皮質 萎縮 した可能性を指摘する。

 肥満 については 2 型糖尿病動脈硬化 の リスク が 強調されてきた
が、大脳皮質萎縮 の リスク も追加された。 高齢期の 認知機能 を保つ
ためには、60 代前半から 体重ウエストサイズ を管理しておくことが
重要だろう。
                  (白澤卓二・お茶の水健康長寿クリニック院長) 

          新聞コラム Dr. 白澤 ” 100 歳への道 ” より