生活習慣 の 構造 を変える
 大脳 には 灰白質( 大脳皮質 )と 白質 があり、灰白質 には 神経細胞 の 細胞体 が
局在するが、白質 には 神経細胞 から伸びた 軸索 が局在していて 情報伝達 に 関与
している。

  認知症 を発症すると、大脳灰白質 の 神経細胞 の数が 減少 することが 知られてい
るが、結果的に 神経軸索 の 数 も減るので 大脳白質 の 容積 が 小さくなり、 が 萎
縮する。

 一方で、認知症 の MRI( 磁気共鳴画像化装置 )検査では、神経軸索 が 変性
し 白質路 の 走行 が乱れるので、拡散強調画像 で 異常が 検出 される。 神経軸索 は
髄鞘 という絶縁性の リン脂質層 に巻かれることにより 情報伝達効率 を上げているが、
白質 の 微細構造 の 変化 と 認知機能、あるいは 運動 パフォーマンス との 関連性 に
関しては よく理解 されていなかった。

 そんな中、ドイツ の ミュンスター大学精神科 の ヨナサン・レップレ博士 らの 研究
チームは 2 分間 に 早歩き で歩ける 距離( 歩行耐性 )が 長いほど 大脳白質 の 微細構
造の 質 が 高く、認知機能 の パフォーマンス が 高いことを 明らかにして 話題 を 呼ん
でいる。

 研究チームは 健常 な 成人男女( 平均年齢 28.8 歳 )を 対象に、MRI データ から 大
脳白質 の 微細構造 を 解析し、運動 パフォーマンス として 2 分間の 歩行耐性 と、記
憶力、鋭敏性、判断力、推理力などの 認知機能 との 関連性 を 検討 した。

 その結果、歩行耐性 の 高い人は 大脳白質 の 微細構造 の 質 が 高く、認知機能
フォーマンス が 高い ことが分かった。 これまで MRI 画像 で 大脳白質病変 を認め
ると 動脈硬化病変、脳虚血性病変 や 認知症 に伴う 変性病変 と 診断 してきたが、今
回 の 研究 で 運動 パフォーマンス などの 生活習慣 に 構造上の 変化 を もたら
すことが 分かった。

 研究チームは 運動 パフォーマンス の 評価として 歩行耐性 を 指標にしたが、2 分間
の 歩行耐性 には 下肢筋力 よりも 速歩 という 運動 プログラム が大きく 関与 し
ている。

 MRI の 拡散強調画像 は 神経軸索 の 微細構造、つまり 髄鞘 の 量 や 質 を 評価 して
いることから、運動 により 髄鞘 の 質 が 向上することで 情報伝達効率 が 良くなり、
運動認知機能 が 向上した 可能性 を レップレ博士 は 考察 する。

 今回の 研究 で 生活習慣の 構造 を ダイナミック に 変化 させていることが分
かった。 若い頃 からの 生活習慣認知機能 の 維持 や 認知症 の 予防 に 重要 で
あることが 再認識 された。
                                                  (白澤卓二・お茶の水健康長寿クリニック院長) 

            新聞コラム Dr. 白澤 ” 100 歳への道 ” より