アルツハイマー病 については、アポ E 遺伝子 の 一部 のタイプ( 型 )を 保有する
人の 発症リスク が 高い ことが 知られている。 ただ 最近 の研究では、アポ E 遺伝
子 だけでなく 多数の 遺伝子 が 関与 すること、生活習慣 などの 環境要因 が 重要 な
役割 を果たすことも 報告 さている。

 そんな中、認知症遺伝要因 を持っていても、生活習慣 を見直せば 発症リスク を
下げられる との 英 エクセター大 の デビッド・ルウェリン博士 らの 報告 が 話題 を
呼んでいる。  

 研究チーム は 英国在住 の 認知機能 が 正常な 健常高齢者 の 男女 19 万 6383 人
( 平均年齢 64 歳 )を対象に、遺伝要因生活習慣要因認知症発症 との 関連性
を、平均 8 年にわたり 追跡調査 した。

 遺伝要因血液検査 で リスク を 5 段階評価。 一方、生活要因 は 喫煙、定期的
な 運動習慣、健康的な 食生活、適度な アルコール摂取 の 4 項目を アンケート し、
健康的、普通、非健康的 の 3 段階で 評価した。 調査期間中 に1769 人が 認知症
発症 した。

 解析 の結果、遺伝リスク が低く、かつ 健康的 な 生活習慣群 の 発症リスク を「1」
とした場合、遺伝リスク が 低く 非健康的 な 生活習慣群 の 発症リスク は 1.52 だった。

 遺伝リスク が 中程度だと、健康的 な 生活習慣群 の 発症リスク が 1.36 だったのに
対し、非健康的 な 生活習慣群 の 発症リスク は 1.70 。 更に 遺伝リスク が 高いと、
健康的 な 生活習慣群 の 発症リスク は 1.95 、非健康的 な 生活習慣群 の 発症リスク は
2.83 だった。

 ルウェリン博士 は、認知症遺伝要因 があっても 生活習慣 を改善すれば 発症リ
スク を 45 % も 減らせると 推察 する一方、環境 より 遺伝 の方が 発症寄与率 が 高い
点 も 指摘。 遺伝子検査 の重要性 を 強調する。

 いずれにせよ、親 が 認知症 と 診断 されたら 自分自身 の 生活習慣 を見直す 必要
があるだろう。
                                                     (白澤卓二・お茶の水健康長寿クリニック院長)
 
             新聞コラム Dr.白澤  ” 100 歳への道 ” より