最近、歯周病 を引き起こす ジンジバリス菌 が アルツハイマー病 患者 の 脳 の 「 老
人斑 」で 検出 されることから、歯周病 と 認知症 の関連性に 注目 が集まっている。
そううした中、九州大学 歯学部 の 武 洲 准教授 らの 研究チーム が、歯周病 の 歯肉組
織 で タンパク質 の アミロイド β が 産生 されていることを示し、話題 となっている。

   老人斑 は 脳 に アミロイド β が 凝集 して起きる アルツハイマー病 の 病変 として知ら
れている。 神経細胞 毒性 を示すことから、病気 の 原因 と 長い間 考えられてきた。
もし、末梢組織 で産生された アミロイド β が 脳 の 老人斑 に運ばれ 供給 されていると
すれば、歯肉病巣 の 慢性炎症 の 治療 は 老人斑 における アミロイド β の 蓄積 を 遅ら
せ、認知症 の 伸展 を 遅らせる 可能性 がある。

 そこで、九大 研究チーム は ジンジバリス菌 の 慢性炎症 を 起こしている 歯周病
者 8人を 対象 に 歯肉組織 を調べたところ、炎症組織 に 浸潤 している、マクロファー
ジ という 白血球 の 細胞質 で アミロイド β が 産生 されていることが分かった。

 更に 研究チーム が マウス の 歯肉 に ジンジバリス菌 を 注射して 慢性感染 病巣 を
作ると、ジンジバリス菌 は 全身感染 を起こした。 マウス の 肝臓 を調べると、肝臓
の マクロファージ が アミロイド β を 産生 していることも分かった。

 慢性歯周病 の 患者 については、武 准教授 は 歯周病巣 の マクロファージ が 脳 の
老人斑 の アミロイド β の 供給源 になっている 可能性 を 指摘 している。

 虫歯 の 病巣 が 歯髄 に及んで 根管治療、つまり 神経 を 抜く治療 を 受けた人 も 多
いと思う。 そうした 歯 は 神経 が通っていないため、歯根管 から 表面 に通じている
細かい 多数 の 側枝 が ジンジバリス菌 の 慢性炎症 の 温床 になる 危険性 がある。 
これが 脳 の 老人斑 の アミロイド β の 供給源 になっているなら、歯周病 の 原因 と
なっている 歯 を 抜歯 して インプラント治療 などをする 選択肢 もある。

 アミロイド β を 巡っては、「 アルツハイマー病  真実 と 終焉 」の 著者、デール・
ブレデセン博士 は 水銀 などの 重金属 や カビ、ウィルス、歯周病菌 などの 感染源 か
ら 神経細胞 を 防御 していると 主張 している。

 ともあれ、中年期 から 高齢期 にかけて 歯周病 の 予防 と 早期治療 が 認知機能 を
保つのに 重要 であることが 再確認 されたことは 確かだ。

                                                      (白澤卓二・お茶の水健康長寿クリニック院長)

           新聞コラム Dr. 白澤 ” 100 歳への道 ” より