認知 機能 低下 改善 の 可能性
 一般的に 高齢期 に 発症する アルツハイマー病 の 脳 の 病変 は 50 歳代 前半 から
始まると 言われている。 最近 の 精度 の高い 認知 機能 検査 では、固有 名詞 に 関
する 記憶力 低下 や 推論 能力 低下は 40 歳代の 半ば から 始まる との 報告 もある。

 そこで 注目 されているのが、米 ニューヨーク 州立 大学 ストーニーブルック 校 の
リリアン・ムジカパロディ 博士 らの 研究 報告 である。 40 歳代 後半 で 脳 の 神経
ネットワーク が 不安定化 することにより 認知 機能 が 低下 するが、ケトン食 で 安定
化 させることが 出来る というのだ。

 ケトン食 とは、炭水 化物 を 厳しく 制限 し、カロリー の 大半 を 脂肪 で 摂取 しよ
う という ダイエット法。 研究 チームは 18 歳 から 88 歳 までの 健康 な 成人・高齢
者 を 対象 に、機能性 MRI( 磁気 共鳴 画像化 装置 )で 計測 された 脳 の 神経 ネット
ワーク の 安定性 と、実年齢 や「 インスリン 抵抗性 」( インスリン の 効き が 悪い
状態 )など 脳 の 認知 機能 に 関与する バイオマーカー との 関連性 を 調べた。

 その結果、脳 の 神経 ネットワーク は 47 歳 ごろから 不安定化 が 始まり、60 歳 で
最も 不安定 になることが 分かった。

 更に、脳 の 神経 ネットワーク の 不安定化 は 神経 細胞 の インスリン 抵抗性 に 関
係 していることから、神経 細胞 の エネルギー 代謝 が グルコース( ブドウ糖 )から
ケトン 体 に シフト すると インスリン 抵抗性 が 改善 する点に 注目。

 50 歳 未満 の 42 人の 健常 な 成人 を 対象 に、「 1 週間 の 標準的 な 食事 」 を 食
べた 群 と「 ケトン食 」を 食べた 群 で 比較・検討。 その結果、ケトン食 摂取 によ
り 神経 ネットワーク の 安定化 が 可能 であることも 分かった。

 また ムジカパロディ 博士 は、グルコース を 投与 した後は 神経 ネットワーク が 不
安定化 するため、神経 細胞 の 代謝 が グルコース に 依存 している時は インスリン 抵
抗性 が 増加 している とも 考察 している。

 最近 の 研究 で 固有 名詞 の 記憶 は 頭頂葉 と 前頭葉 間、あるいは 頭頂葉 と 側頭葉
間 の 神経 ネットワーク が 重要な 役割 を 果たすことが 知られている。 40 代 後半 の
認知 機能 の 低下 は  神経 ネットワーク の 不安定化 が 原因 かも しれない。

 だが 今回 の 研究 で、ケトン食 で 神経 細胞 の 代謝 を 変える ことで 神経 ネットワ
ーク を 安定化 させ、記憶力 や 推論 能力 などの 認知 機能 低下 の 改善 が かなう 可能
性 が 示唆 され、中年 からの 食生活 の 重要性 が 再確認 された。

                 (白澤卓二・お茶の水健康長寿クリニック院長)

           新聞コラム Dr. 白澤 ”100 歳への道 ” より