処方見直し、食生活改善を
 胸 焼け や 逆流性 食道炎 に 対して 処方 されるのが、プロトン ポンプ 阻害剤 と 呼
ばれる 制酸剤 だ。 胃壁 の 細胞 には プロトン を 胃 の 中 に くみ 出す ポンプ の 働
き をする 分子 があり、これを プロトン ポンプ と 呼ぶ。

 プロトン ポンプ の おかげで、胃酸 は 酸性度 を示す pH (ペーハー)1  程度 の 強い
酸性 を 保つ ことができ、タンパク 質 を はじめ とする 様々な 栄養分 を 分解 できる。

 プロトン ポンプ が 働き 過ぎる と 胃液 の 酸性度 が 必要 以上 に 強まり、胸 焼け や
逆流性 食道炎 の 原因 になる。 プロトン ポンプ 阻害剤 は、ポンプ 機能 を 阻害 して
胃酸 の 過剰な 酸性化 を 抑える 制酸剤 として 日常的 に 臨床 で 処方 されている。

 一方で、阻害剤 を 長期間 処方 されている 高齢者 は 認知症 の 発症 リスク が 高まる
と 報告 されてからは、不必要な 長期間 の 処方 を 控えるよう 注意 が 促されている。 
胃液 の 酸性度 が 下がると、脳 の 代謝 に 必要な ビタミン B 12 の 吸収 の 低下 や、腸 
内 細菌叢 が変化 して 認知 機能 に 影響 を 及ぼす ものと 考えられて きたからだ。

 それだけでだはない。 阻害剤 を 長期間 服用 すると 脳 の 認知 機能 に 必須 の 神経
伝達 物質、アセチルコリン の 代謝 に 直接的 に 影響 を 及ぼし、認知 機能 を 低下 させ
る 可能性 が あることが 明らか になった。

 スウェーデン の カロリンスカ 研究所 の タヘル・ダレーショリ 博士 らの 報告 で 分か
った。 アセチルコリン は 脳 の マイネルト 核 と 呼ばれる 基底核 で 発現 するが、アル
ツハイマー 病 を 発症 するとその 発現量 が減少 して 記憶力 が 低下 するといわれる。

 ダレーショリ 博士 は、マイネルト 核 が アセチルコリン を 合成 している アセチルコ
リン 合成 酵素 に 注目。 合成 酵素 の 立体 構造 を コンピューター 上 で 構築 したとこ
ろ、一般的 な 阻害剤 オメプラゾール、ランソプラゾール、パントプラゾール も 合成 酵
素 の 活性 の 中心 と 強力 に 結合 し、アセチルコリン の 合成 活性 を 阻害 することが
判明 した。

 高齢者 には 阻害剤 が 長期間 処方 されている 症例 が 多数 あり、そのため 認知 機能
の 低下 が 加速 している 可能性 がある ーーー ダレーショリ 博士 はそのように 警鐘 を
鳴らして いる。

 胸焼け や 逆流性 食道炎 は 食べ過ぎ や 肥満 が 原因 である 症例 が 多く、食事 指導 で
改善 する ケース が 多い。 プロトンポンプ 阻害剤 を 処方 されている 人 は 服用 の 必
要性 を 見直す 必要 が ありそうだ。

                   (白澤卓二・お茶の水健康長寿クリニック院長)

             新聞コラム Dr. 白澤 ” 100 歳への道 ” より